伝統の技に支えられて
仏壇の出来るまで
金仏壇製造の一大産地、広島。長年にわたって培われた伝統の技術によって作られる「広島仏壇」の生産工程は、木地、狭間(さま)、宮殿(くうでん)、須弥壇(しゅみだん)、錺(かざり)金具、漆塗、金箔押、蒔絵と大きく七つの工程に分かれています。
各工程では伝統の技を受け継いだ職人たちが、より質の高い仏壇作りのために、その技を発揮しています。
広島仏壇ができるまでの工程を紹介します。
まず「木地」の処では仏壇の器にあたる部分が作られ、それと平行して「狭間」、「宮殿」、「須弥壇」の各工程でそれぞれの部分が制作されます。
「狭間」工程で欄間や宮殿の彫刻部のかざりが彫りこまれ、「宮殿」工程では、寺院仏閣の縮小版である宮殿を、実物と同じ技法で組み上げます。「須弥壇」工程では壇回りの部分の彫刻をほどこし須弥
壇を組み立てます。
また、「錺金具」工程では真ちゅうの板を鏨で打ち抜き、仏壇の金具全般を作ります。
各部分が出来上がると、部品の仕上げにあたる「漆塗・金箔押」工程にはいります。
「漆塗・金箔押」の職人が木製の部分に幾度も下地をほどこして研ぎ、最後に上漆を仕上げます。必要なところには金箔が押されます。
蒔絵を描く部分には「蒔絵」専門の職人が漆で絵を描き、その上に金粉を蒔いて仕上げます。
最後はすべての部分が集められひとつの仏壇として組み立てられ、技の粋を集めた工芸品として完成するのです。
このように数々の技術を結集して広島仏壇は作られています。
多くの用具製造が機械化される中で、広島仏壇は今でもかなりの工程が、優れた技をもった職人の手仕事で支えられているのです。
木地師(きじし)
仏壇の本体にあたるものが作られます。仏壇の外回り、内回り、障子、扉などといった各部分をサイズに合わせて加工し、ホゾ組という木地独特の技術で組み立てていきます。
ここでの仕事は仏壇の仕上がりの質に大きく影響を及ぼすため、高度な技術が必要となります。
狭間師(さまし)
木材に彫刻をほどこし、仏壇の欄間や宮殿の彫刻部のかざりを作ります。
まず模型を型紙がら木におこし、数十種の彫刻刀を巧みに使い分け、彫っていきます。
熟達っした職人でも仕上げにかなりの日数がかかります。
宮殿師(くうでんし)
部材に細工して斗(ます)とよばれる小さな部品を作ります。
それを階段状に組み上げて柱をつけ、ご本尊を安置する宮殿ができ上がります。
須弥壇師(しゅみだんし)
木材に図柄を描き、須弥壇の壇回りの部分を彫っていきます。彫刻が完成すると、木組という方法で
組み立てられます。ひとつずつ手仕事で行われており、熟練の技が要る大変細かい作業です。
錺金具師(かざりかなぐし)
真ちゅうの板に型紙で図柄をおこし、何百種もある鏨(たがね)を使って打ち抜き、模様をほどこします。そして用途に応じて金メッキ、銀メッキ、ああるいは特殊技法を使って青、茶、黒などの着色をしてでき上がりです。蝶番(ちょうつがい)や引き出しの取っ手など、仏壇の金具のすべてがここで作られます。
蒔絵師(まきえし)
「蒔絵筆」という特殊な細い筆を使い、漆で絵を描きます。
そして漆が乾かないうちに純金の金粉を蒔いていきます。
その後、乾かして仕上げます。金粉を蒔くタイミングなどが大変難しく、長年培われた職人の勘、腕が生きる仕事です。
塗師(ぬし)
仏壇の部品に下地、中塗りをほどこし、最後に天然素材である漆を塗って仕上げます。
漆が乾いた後、必要なところには金箔を押していきます。漆はある一定の温度で乾き、また、少しの
ほこりも許されないため細かい配慮と根気が要求されます。